きんこんぶろぐ

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1年に3500冊読書する私が新入生に勧める厳選10冊

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 今回の記事では、私がこの1年で読んだ約3500冊の中から、新入生に是非とも薦めたい厳選に厳選を重ねた10冊を紹介する。

 

 選考基準は

  • 面白い
  • 基礎知識がなくても読める
  • 全ての学部生が活かせる知識が詰まっている
  • 世界を見る目が変わる教養が身につく
  • 出版が比較的新しい、少なくとも戦後

である。この五つに当てはまるものの中から、異なるカテゴリの名著を抜粋した。

また、こういった「大学生が読むべき本」的なサイトで紹介されがちなビジネス書・アドラー心理学などの本は一切排除した。理由としては簡単で、こういった類の本は科学的な根拠がなく、あくまでも個人の経験に基づいて書かれたものばかりだからである。

 

 以下の本は皆、毒にも薬にもなる。常識を散々打ちこわすもの、真理を暴き出すもの、ロマンを語るもの、希望を抱かせるもの。どれもが必ずこれからの人生に影響を与え、血となり肉となる力を秘めているものばかりだ。

少なくとも、この先50年は読まれ続けるであろうものばかりである。どの本も時間の淘汰に耐える「現在の古典」だ。

 

 さて、前置きはこれまでにして、早速本を紹介していこう。この記事が皆さんの読書ライフの参考になれば幸いである。

 

1冊目:理科系の作文技術

木下是雄著 中公新書

 

理科系の作文技術(リフロー版) (中公新書)

理科系の作文技術(リフロー版) (中公新書)

 

 

 文系・理系関係なく、この本は絶対に読むべき! これを読まずしてマトモなレポートは書けないと言ってもいいくらい、わかりやすく学術的な文章の書き方を伝授してくれている本。

筆者は元学習院大学学長で物理学者の木下是雄。学徒を志すなら必ず本棚に並べておきたい一冊。新書だから安いし。

本にまるで無駄がないので逆にコメントに困る。

 

2冊目:科学の方法

中谷宇吉郎著 岩波新書

 

科学の方法 (岩波新書 青版 313)

科学の方法 (岩波新書 青版 313)

 

 

今日われわれは、科学はその頂点に達したように思いがちである。しかしいつの時代でも、そういう感じはしたのである。その時に、自然の深さと、科学の限界とを知っていた人たちが、つぎつぎと、新しい発見をして科学に新分野を拓いてきたのである。科学は、自然と人間との協同作品であるならば、これは永久に変化しつづけ、かつ進化していくべきものであろう。』

 歴史学などの人文学や商学部などの社会科学も、いかに科学的かが求められる現在。そんな今だからこそ、科学の基礎、そして限界を知っておく必要がある。

何より、この本が昭和33年、西暦1958年に出版されたことが驚きだ。その先見の明に、ただただ驚嘆するばかりである。

著者は北海道大学教授で物理学者だった中谷宇吉郎

教養として、学問を志す全ての人が読むべき一冊。一言で表すなら、超科学入門。

 

3冊目:つきあい方の科学−−バクテリアから国際関係まで

ロバート・アクセルロッド著 ミネルヴァ書房

 

つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

 

 

 出版年が有名な古典と比べ、比較的新しいのにもかかわらず、プラトンの「国家」、ホッブズの「リヴァイアサン」といった古典と並び、アイビーリーグ(ハーバード大など、アメリカの私立大学トップ10)でのテキスト採用数ベスト10に入った本。

著者は現在もミシガン大学の教授を務めており、一時期はアメリカ政治学会の会長も歴任していたロバート・アクセルロッド。

囚人のジレンマなどを例として、今流行りの「ゲーム理論」を解説してくれている。果たして、最も優秀なつきあい方の戦略とは? その答えがこの本には書かれている。

国家間からバクテリアまで、進化生物学の観点から「つきあい」を科学的に解き明かした一冊。

 

4冊目:宇宙論入門—誕生から未来へ—

佐藤勝彦著 岩波新書

 

宇宙論入門―誕生から未来へ (岩波新書)

宇宙論入門―誕生から未来へ (岩波新書)

 

 

 宇宙の始まりから終わりまで、壮大な宇宙の物語がこの一冊に描かれている。

宇宙はたくさんあるという「マルチバース仮説」や、「宇宙の赤ちゃん」を作り出すという人類最大の野望にまで触れられている。宇宙の限界に挑むことは、人間の想像力の限界に挑むことでもある。

筆者は東京大学教授である佐藤勝彦、宇宙創生研究のパイオニアだ。

自分を包み込んでいるものの最大単位である宇宙、これについて知りたいなら絶対に読んでおくべき一冊。

 

5冊目:利己的な遺伝子

リチャード・ドーキンス著 紀伊國屋書店

 

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

 

 

『この本はサイエンス・フィクションのように読んでもらいたい。イマジネーションに訴えるように書かれているからである。けれどこの本はサイエンス・フィクションではない。それは科学である。いささか陳腐かもしれないが、「小説よりも奇なり」ということばは、私が真実について感じていることをまさに正確に表現している。われわれは遺伝子という名の利己的な分子を保存するべく盲目的にプログラムされたロボット機械なのだ。この真実に私は今なお驚きつづけている。』

 「なぜ世の中から争いがなくならないのか」「なぜ男は浮気をするのか」など、身近な問いかけから、「個体は有限だが遺伝子は永遠である」という壮大な思索までが描かれている。主としては、生物の進化について分かりやすく書かれた本だ。

筆者はオックスフォード大学教授であるリチャード・ドーキンス、彼は「戦闘的無心論者」としても知られている。「ミーム」という言葉の生みの親も彼である。

一冊にしてこれまでの常識が崩れ去ること間違いなし、暴力的なまでの力を備えた一冊だ。

 

6冊目:銃・病原菌・鉄

ジャレド・ダイアモンド著 草思社

 

銃・病原菌・鉄 上巻

銃・病原菌・鉄 上巻

 

 

 00年代最高の本は、これに違いない。ピュリッツァー賞など、数々の著名な賞を受賞した本でもある。

「あなたがた白人は、沢山のものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私達ニューギニア人には自分のものといえるものがほとんどない。それは何故だろうか?」という、一人のニューギニア人の問いかけからこの本は始まる。筆者はこの問題に「白人はたまたま住んでいた環境に恵まれていたから」と答えた。

タイトルは白人がインカ・マヤを滅ぼした最大の武器、「銃・病原菌・鉄」からきている。

なぜインカ帝国はヨーロッパを侵略することができなかったのか? 稀代の博学者、ジャレド・ダイアモンドが、人類史の巨大な謎に迫る過程を描いた知的エンターテイメント。これを読まずして、読書家は名乗れない。

 

7冊目:サピエンス全史

ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

 

『想像上の秩序から逃れる方法はない。監獄の壁を打ち壊して自由に向かって脱出したとき、じつは私たちはより大きな監獄の、より広大な運動場に走り込んでいる。』

 「銃・病原菌・鉄」が、人が生み出したものではないものたちが、人類にどう影響を与えたかを描いた本なら、「サピエンス全史」は、人が生み出したものによって、人類がどう変わってきたかを記述した本だろう。

現在、世界を動かしている主な力は国家・お金・宗教だが、これらは全て人間の想像の産物、「虚構」である。人権・法律・企業・幸福、これらの虚構はいかにして生まれ、どのような影響を人類に与えたか。そして、人はこれから「何を望みたい」のか。

10年代最高の本はおそらくこの本だ。ヘブライ大学教授、新気鋭の歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが送る、人類が知恵を得てから、未来までの物語。

 

8冊目:人間の本性について

エドワード・O・ウィルソン著 筑摩書房

 

人間の本性について (ちくま学芸文庫)

人間の本性について (ちくま学芸文庫)

 

 

 攻撃・性・社会・宗教、人間の生物的な側面に残酷なまでに焦点を合わせた一冊。この本もピュリッツァー賞を受賞した。

筆者はハーバード大学の教授であるエドワード・O・ウィルソン。「社会生物学」という、数理モデルで生物の社会を研究する学問を始めた第一人者でもある。

彼は、「社会生物学」を人間にも当てはめ、非難を浴び、水を若き研究者にかけられたこともあった。しかし、彼の研究の正当性は次第に認められつつある。まさに現代のガリレオである。

また、彼はこの本で社会学系と自然科学系の統合を訴えている。人間を「冷めた目」で見ることの重要性を訴える、人間の生物学とも呼べる一冊である。

 

 

9冊目:思考の技法—直観ポンプと77の思考術—

ダニエル・C・デネット著 青土社

 

思考の技法 -直観ポンプと77の思考術-

思考の技法 -直観ポンプと77の思考術-

 

 

 至ってマトモな論理から、初見では宮うることが難しい詭弁まで、様々な論述法・思考法を挙げながら、「そうであるとしか考えられない」本質を直接、そのまま汲みだす最強の思考ツール、「直感ポンプ」へと導く本。

後半には中国語の部屋、双子の地球、哲学的ゾンビなどの、まだ未解決の哲学的問題が山ほど載っており、筆者とともにその難問に挑戦することができる。

筆者はタフツ大学教授であるダニエル・C・デネット、意識と心の問題に挑み続けている当代随一の哲学者だ。

読めば気分は哲学者、そんな一冊である。

え? 哲学者の気分なんか味わいたくない? またまた、そんなこと言っちゃってぇ……

 

10冊目:暴力の人類史

スティーブン・ピンカー著 青土社

 

暴力の人類史 上

暴力の人類史 上

 

 

 世界各地ではテロが頻発し、イスラム国が暴れまわり、日本でも暴力事件が日夜起きる……。老人が「昔はもっと良かった」と嘆く姿を誰もが一度は見たことがあるはずだ。平和な時代と言われると、たいていの人は現代ではなくもっと昔、例えば縄文時代を思い浮かべるだろう。

そんな老人の嘆きと、私たちの幻想をブチ壊してくれるのがこの本だ。殺伐としたタイトルとは違い、いかに人類が文明化のおかげで平和になってきたのかを、これでもかというデータの量で示してくれている。「人間の本性について」が冷たい人間観を与えるのとは真逆の内容である。

筆者はハーバード大学教授の心理学者、スティーブン・ピンカーだ。彼はTIMEの「世界で最も影響力のある100人に選ばれたこともある、心理学界の大物研究者だ。

神経生理学など、多彩な手法を用いながら、人間の本性を分析していく様はまさに圧巻である。

この一冊を読んで、あなたも「合理的楽観主義者」に!

 

 10冊の紹介は以上である。いかがだっただろうか。読みたい本は見つかっただろうか。

なかなかに分厚く、手強い本もいくつかあるが、これらは総じて面白く、決してソシャゲをしているだけでは見ることのできない、面白い世界を私たちに見せてくれる。それがファンタジーなどではなく、現実の話なのだから尚更面白い。

これらの10冊を以って、圧倒的な教養を身につける旅のスタートとしてもらいたい。

 

 また、近々惜しくも先行落ちした本たちを一言解説とともに、ブログに載せるつもりである。

こちらも名著揃いなので、この10冊を読み終わった方や、読む本を探したい方には是非とも覗いてもらいたい。きっとお役に立てるはずである。