9/23 曇り
夏休みが終わってまたすぐ休日。編入試験まで時間が少ないことに気づき、忙しく問題集を解く日々。
英語の勉強方もわからない。心理学の勉強方法もわからない。小論文はもちろん、面接への対策も目処がついていない。
これはダメだ。ダメなパターンだ。
本を読みすぎたあまり、自分の無知を知りすぎて、どこからが知っていることで、どこからが知らないことなのか、境界線が非常に曖昧になっている。
やばい。
こういう時に限って宇宙や時間、空間といったスケールのデカイことを考えて、一人で勝手にビビっている。
私は焦ると、スケールのデカイことを考えがちである。
規模のデカさだけで俺をビビらせるな殺すぞ(理不尽)
宇宙は私を試験には受からせてくれないのである。試験に受かるせることができるのは、私自身の勉学のみである。とほほ、なんと頼りないことか。
こういう時は現実逃避したくなる。
自分が永遠に受験生で一生を終えそうな錯覚を覚え始めたので、このままでは精神状態がおかしくなってしまう。
むしろ一周回って真人間に戻ってしまいそうだ。そ、それだけはイヤだ!
現実逃避その1、昼寝。
ノイズキャンセリング付きのウォークマンに、耳元でひたすら擬音語をロリボイスで囁かれるmp3ファイルをぶち込んだ。
もはや私の快眠を妨げるものはいない。
いざ動画を再生する。オォウ、なんという幸福感。
体がなんだかふわふわしてきたぞ。さわさわ、ぺちゃぺちゃ、ころころ、かたかた、さわさわ、……グゥ。
とはならなかった。
聞いているうちになんだかロビンソンが変になってきた。
ロビンソンがヤバい。
私が音フェチなのがいけなかったのか。全身のふわふわ感が、ロビンソンに凝縮されていく感覚がする。
私は音声を止めた。ロビンソンは落胆した。
そうだ、これでいい。これで……。
現実逃避その2、ゲームをする。
持ち合わせのゲームがなぜかポケモンとマインクラフトしかなかった(他のゲームは金欠の際に全て売り払ってしまった)ので、私はマインクラフトを選んだ。
ポケモンをするとさらにストレスがかかりそうだ。レート対戦に潜っても、私が休止していた間に切磋琢磨してきた廃人たちに滅多打ちにされる未来しか見えない。かといって通常プレイをしても、なんだか刺激が足りない気がする。
マインクラフトの個人プレイには飽きたので、久々にマルチプレイをしてみることにした。
適当にサーバーを入力し、潜入する。
人間は挨拶が大切である。「hi」と、久しぶりにまともな挨拶をネット空間に投げかけた。最近は某ペンギン動画の影響で変な挨拶しかしていなかった。
会心の挨拶である。だが、誰からの反応もなかった。
プレイヤーは20人を超えていたのに。新参者だからだろうか?
私はすっかり拗ねてしまって、勝手に鉱物を掘り始めた。
私は掘ることが好きである。掘り掘り掘り掘り掘り掘り掘り掘り掘り掘り。
マグマに突っ込んでダイヤ14個を失った。
私の二時間が消え失せた。
私はサーバーから退出した。
アーーーーーーーーくそが。
そして、日記を書いている今に至るわけである。
現実逃避には失敗した。
ロビンソンとマグマは無情な現実の写し鏡のように、私の現実逃避を真っ向から妨害した。
現実とのガバディに敗北し、生命力をすっかり吸い取られた私は、普段通り文字の大海へと逃げ込んだわけだ。
外は暗くなりつつある。
1日を無駄にした、そんな無念感にすっかり心は覆い尽くされた。
気晴らしに、スタバでほうじ茶フラペチーノを頼んだ。
完全にキャラメルの味しかしなかった。私が味覚音痴だからだろうか。
こうなると何故ほうじ茶フラペチーノを頼んだのか分からなくなってきた。
もうこれ、キャラメルフラペチーノでも良かったのでは?
自由意志は私には存在しているのか?
宇宙とは……?
宇宙はほうじ茶フラペチーノをちゃんとほうじ茶の味にはしてくれない。
私のチンケな悩みの前では宇宙もアインシュタインもほうじ茶フラペチーノも、役に立たないのである。
ほうじ茶フラペチーノはいつの間にか溶け、黒っぽい粒がカップの底に溜まっている。
ほうじ茶フラペチーノの残りをストローで一気に吸い込む。ようやく、ほうじ茶の風味を少し感じた。