2/3 曇り
自主ゼミを主宰したり、友人らと猫カフェに行ったり、これまでにないほど充実した春休みを過ごせている。
院試の勉強は継続しねければならないし、卒論のための実験もいよいよ始まるので、これからも大忙しだ。
春休みの間には、抵抗なく英語論文を読めるようになったり、自分の分野や心理統計学にもっと精通しておきたい。
より良い存在になれるという希望が、今の私を突き動かす力の源だ。
明日はきっと、私史上最強の私になれるはず。
勉強の息抜きに、梅田の街をぶらりと歩いた。
私は街を歩くとき、たいてい斜め下を向いている。
すれ違う人と視線が合ってしまうのは、少し良い心地がしないからだ。
それに、下を向いていると何かいいものが落ちているかもしれない。
お金とか、誰かの免許証とか。
別にこれらを奪ったりはしなくても、交番などに届け出るだけでも、立派な暇つぶしになる。
こういう小さな出来事が、案外日常にメリハリをつけてくれる。
だから私は、「なんかエロいものでも落ちてないかなー」と考えながら、下を向いて歩く。
地面にエロいものが落ちていた試しなど、一度もないのだが。
エロいものは、落ちているなら正直なんでもいい。
成人向けの雑誌でも、逆レイプでも、耳舐めでも。
でも、地面に落ちていた耳舐めって、なんだか嫌だ。
砂埃とか、たばこの吸い殻みたいなバッチイものがへばりついていそうだ。
そんな耳舐めを欲しがる人なんていない。
万が一逆レイプや耳舐めが地面に落ちていたら、ツイッターで呟くネタにはできそうだが。
「道に耳舐めが落ちていた」とか、ツイートしてみたい。
『逆レイプ』で思い出したのだが、最近『ソフトM』という言葉を知った。
逆レイプだとか耳舐めとか、言葉責めが私は大好物であり、”意味深”なほうのオカズを探すときは、これらのワードをいつも検索するときに使っている。
だが、M向けのコンテンツは振れ幅が非常に大きい。
相手に押し倒されて最後はイチャラブで終わるものから、終始暴力を振るわれ、最後には社会的に人生が終わってしまうものまで、レパートリーは様々である。
たかがM向けと侮るなかれ。
そこには豊かな文化が広がっている。豊穣Mゥ!
ドМなら、相手にボコボコにされるのが好物の人も多いだろうが、残念ながら(残念ながら?)私はそこまでのMではない。
痛いのは嫌いだし、性行為なんてもので誰かを傷つけることになったり、人生が終わってしまうなんてふざけてると思う。
だが、広大で多様な世界があるのにもかかわらず、これらのコンテンツは全て『M男向け』の一言でまとめられてしまうことがほとんどである。
なので、自分好みのオカズに辿り着くのは労力のいる作業だ。
『逆レイプ』で調べたら、なぜかレイプものばかり検索結果に上がって辟易したり、『言葉責め』で調べても、女性向けの音声作品しかヒットしなかったりする。
再生したら、ナルシスト風の男に耳元で囁かれ耳を舐められた、なんてことがごまんとある。
「ガキが……舐め舐めしてると潰すぞ」と、タモリのような気分になる。
そこで、『ソフトM』だ。
この言葉は軽い言葉責めといったものを好む人を指す言葉らしい。
『M男向け』を『ソフトM』、そして『ハードM』に区分する、といった感じだろう。
私は明らかに前者なので、この言葉が存在することはとてもありがたい。
さっそく、『ソフトM』で検索してみる。
――だが、まったくオカズが見当たらない。
流動食やペーパータオルしかヒットしない。
言葉責めでも、逆レイプでもなく、流動食。
さらに調べてみると、『ソフトM』という言葉自体は十年近く前から存在するらしく、このカテゴリ分けが18禁業界であまり浸透していないだけらしい。
こんな便利な言葉が普及していないのはなぜだろうか?
ソフトMの人は、SM関係ないカップルものなどでも満足してしまうからだろうか。
それとも、ドM勢力が強すぎるからだろうか。
よくわからない。
著名な哲学者であるドゥルーズも「哲学とは概念を創造することである」と言っているじゃないか。
哲学でなくても、社会学なんかは概念が大量生産されすぎて、『概念工学』化しているというのに。
エロいことでも、それに名前が付けなければ一つのジャンルとして成立することはできない。
名付けられなければ、そのエロはこの世に存在できない。
あえて言うなら、「エロとはジャンルを創造することである」だ。
我ながら、ドゥルーズに失礼だと思う。
命名法一つ取り上げても、私の好んでいるジャンルでは、『悪堕ち』と『闇堕ち』の表記ゆれや、『クール』と『おとなしい』の境界など、多くの問題が解決されないままである。
こういった状況がもう何年も改善されずに続いている。
だが、こんなことは誰も研究しない。
『だいしゅきホールド』や、『アヘ顔ダブルピース』なんて言葉がなぜ生まれたのか、気に掛ける人は少ない。
エロ研究への世間の風当たりは強く、最近では北海道で『エロ漫画表現史』という本が禁書指定された。
私たちは全知ではない。
人生の重大な問題どころか、エロ業界で用いられている言葉でさえ、知らないことが沢山ある。
知の蓄積が行われないものは、時間と共に去り過ぎていく。
無知の知を心がけたい。
むちむち。
久々に下ネタ満載の記事になった、やいや、やいや。
男子校を卒業して以来、どんどん下ネタのセンスが訛っている気がする。
「女子高の下ネタはえぐい」という話を聞いて、「男子校出身の名をかけて、もっとえぐい下ネタを言わなければ」と、ひとり切磋琢磨していた日々が懐かしい。
今となっては、このセンスは無用の長物。
股間の息子も無用のイチモツだ。
将来セクハラで訴えられないよう、早めに下ネタを頭から消し去りたい。