6/27 晴れ
クソ暑い。
近頃はほどほどに過ごしやすかったのに、今日あたりになって一気に温度が上がった。
汗はかくわ、腹は減るわ、生きるのが難しい日がこれから続いていくのだろう。
最近なんだかよくわからないが、代謝が急に良くなったので、無性に腹が減る。
1日5食が生活習慣になりつつある。
学校の松屋に通って、夏を乗り越えよう。
これから定期的に、ブログの方でも面白かった本を数冊紹介していこうと思う。
以前まではこのような取り組みをツイッターでやっていたが、やはり140文字の制限がさりげなくキツい。
なので、「ブログで書けば、心置きなく本を紹介することができるだろう」という魂胆で書評を書いていこうと思う。
あなたが知っている名著を私が知らないように、あなたが知らない名著を私は知っているはずだ。
これらの記事が、誰かの読書ライフの助けになれば幸いである。
1.遺伝子-親密なる人類史-
- 作者: シッダールタムカジー,Siddhartha Mukherjee,仲野徹,田中文
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/02/06
- メディア: 単行本
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読書中に鳥肌が立ったのは久しぶりである。
もちろんいい意味で。
著者はノンフィクション作家などに送られる名誉ある賞、ピューリッツァー賞を受賞した経歴を持つシッダールタ・ムカジー。
上下巻からなり、計800ページを超える大著である。
そのページ数の多さを感じさせないほど、すんなりと読めた。
ダーウィンやメンデルに始まり、現在のクリスパー/キャス9といった遺伝子工学に至るまでを描いた、いわば遺伝子の人類史。
この手の本は、これまでにでも多数出版されている印象があったが、ピューリッツァー賞作家というだけあって、読ませる文章である。
訳もこなれていて読みやすく、それでいて読み応えのある本だった。
遺伝子を巡り、多くの人間が熱意を持って研究を進めてきた歴史と、遺伝子の存在が優生思想の根本となり、障害を持つ人やユダヤ人などの民族浄化を招いた事実は表裏一体である。
この惨劇は、遺伝子工学の誕生により復活してしまうのだろうか。
遺伝子との向き合い方は、それこそ人類全体で考えなくてはならない問題だと思う。
個人的なオススメは、ワトソンとクリックがこちらが気圧されるまでの情熱をもって、遺伝子の二重らせん構造に迫っていく章である。
科学者たちの果てしない探究心には、敬服せざるを得ない。
2.世界を変えた6つの「気晴らし」の物語
前作の「世界を変えた6つの革命の物語」に続いて、お勧めしたい一冊。
前作が光や冷たさなど、6つの事象からテクノロジーの発展を概観したのとは異なり、今作では6つの娯楽に人類の歴史がどう動かされてきたのかを軽快に語っている。
ファッション、音楽、味、イリュージョン、ゲーム、パブリックスペース。
これら6つの「気晴らし」は、確かに人類を変えてきた。
それと同時に、これらは生きていくのに絶対必要ではないが、現代の私たちの生活に欠かせないものになっている。
ファッションのための木綿が国家を滅ぼし、味のための胡椒が世界最強の通貨になり、映画は市民に幽霊を幻覚させ、ゲームが人工知能の進化を加速させ、喫茶店で民主主義が生まれた。
娯楽が人間にいかに栄光と破滅を与えてきたか、この本は人類史を縦横無尽に飛び回り、私たちに刺激的な「気晴らし」を与えてくれることだろう。
3.日本のありふれた心理療法:ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学
日本のありふれた心理療法: ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学
- 作者: 東畑開人
- 出版社/メーカー: 誠信書房
- 発売日: 2017/02/25
- メディア: 単行本
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公認心理師が今年から誕生する、そんな日本の臨床心理学の変遷期にこそ、読んでもらいたい本である。
著者は気鋭の心理学者である東畑開人氏。
臨床心理学に人類学的アプローチで迫る手法が斬新である。
大学院で臨床心理学を駆使する専門家として教育され、カウンセラーたちは臨床の現場に降り立つ。
しかし現場では、正当な認知行動療法といった技法を駆使することが難しい場面が多々ある。
それゆえ、多くの技法を柔軟に適応し、クライエントの要望に応える必要に迫られる。
本書はそんな「日本のありふれた心理療法」について、歴史的経緯や実際の事例を用いて解説・考察した一冊である。
「認知行動療法をトッピングした精神分析もどきのユンギアンフレイヴァー溢れるロジェリアン」。
つまり、認知行動療法をユング心理学を元にした精神分析もどきを駆使するロジャーズ派カウンセラーというのが日本の臨床家の現状であると、著者は述べている。
臨床心理学に興味を持つ人すべてに読んでほしい。
4.マツコの何が"デラックス"か?
社会学の観点からテレビ業界を分析している著者が、大人気タレント「マツコ・デラックス」について述べた一冊。
現代アート的な表紙のデザインに惹かれて手に取ったが、内容も面白かった。
巨体、オカマ、大食い、底が知れない膨大な教養。
何もかもが弩級な彼(彼女?)が、なぜ多くの人を虜にし続けているのか、数多くのエピソードが提示されており、わかりやすく解説されている。
マツコ・デラックスのテレビにこだわり続けるという信念や、物事の判断に迷いやすいという意外な一面、自身の誇大妄想まで、マツコ・デラックスの魅力という魅力がこの本に詰まっている。
マツコがデラックスなら、この本もデラックス。
普段本を読まない人にも是非とも読んでもらいたい。
とりあえず、今回の本紹介はこれまでにする。
どうだろうか、あなたのお眼鏡に適う本はあっただろうか。
読書は基本、すぐには役に立ってくれない。
しかし、確かに本は自分の価値観、世界観、存在さえも揺るがしてくれる。
日常の薬とするも良し、毒されるも良し。
これらの本を、あなたなりの読み方でものにしてもらえたなら、読書好きとしてそれに勝る喜びはない。